はんぶんこ
うちの父親は、鳶職をしていた。
鳶というのは、家の基礎を作る仕事、と父親が言っていた。
実際に父が働く姿を見たことがなかったので、説明がぼんやりなのがちょっと申し訳ない。
たまに、建前だ(上棟式ともいう)と言って、オードブル(父はおり、と言っていました)をお土産に持ってくることがあった。
たまにお餅とか、硬貨(5円10円、50円、もあったかな)もあったりして。
オードブルの中には、鶏モモの骨つき照り焼き、みたいなのが決まってあって。
いつも母親が、「お兄ちゃんとはんぶんこね」なんて言ってた。
想像できるでしょうか。
骨側とモモ側と、という具合になる。
私は割と骨側を食べることが多くて。
それで喧嘩になることがあった。
喧嘩、というか、私が決まって泣いて、親がなだめるということが度々あった。
いつしか兄が折れて、鶏モモを私が独り占めするようになっていた。
あの時兄はどう考えて折れたのかな。
また食べたいな。「おり」に入ってた鶏モモ。