クリスマス
その日、私は高崎まで買い物に行った。
決めていたメーカーがあったのでそこをめがけていった。
たくさん買っていい買い物ができたと思う。
ここのところいいことがなかったので多少の気分転換にはなった。
帰って夕飯をお隣さんで食べようと決め、家路を急いだ。
というのは、兄がよくお隣さんでママさんと過ごしていたという話を聞いていたので、
どうかな?と思って行ってみた。
聞いていた話によると、コンビニを経営しているという方がお隣さんのお客さんで。
いつもケーキとチキンを頼んで一杯かこんでいたという。
カランコロン、といつものドア開けるとママさんが1人でいたようだった。
するとすぐに兄妹のいつもの席のそばのストーブをつけてくれた。
心づかいのママさんである。私もいつもの席に座る。
よく兄と一杯やってたのよ、とママさんは言う。
ご飯が食べたいなー、とメニューを開いて、私は丼風ライスの照り焼きチキンを頼んだ。
ほかにお漬物、味噌汁がついている。とてもお得で美味しい、私の好きなメニューの1つ。
兄のことをママさんが話し終わったその時、また、「カランコロン」とお客さんが1人入ってきた。
私もハッと思い見てしまった。その人は男性で、年齢も兄と同世代くらいだった。私のぱっと見は、兄の友人に少し似ているな、と思ってしまった。
その男の人はビールを飲んでいた。つまみに私の好きなチキンステーキを頼んでいた。
お腹が空いていたようで、パスタも頼んでいた。
そのうち、ビールから日本酒に移った。熱燗を飲んでいた。
男の人が熱燗を飲んでいたので、私も何かお酒を飲もうかなと私も日本酒を頂いた。
喉を通った後に甘みが広がる、飲みやすいお酒だった。
熱燗を飲み干した後、お店を後にしていた。
ママさんが教えてくれた。その男の人は、兄がよく一緒に飲んでいたという中でも、お気に入りだった方の息子さんだということ。
私は、男の人というだけで「お兄ちゃんだ」と勝手に思っていた。
大好きだったママさんが心配だったのかな?
飲み仲間もたくさんいた兄。それを裏付けるもう1つのエピソードがある。
兄が飲みに出かけると、3件ははしごをする。
私もそれに付き合ってお酒も飲まずひたすら食べていた。
最後に行くのは決まっておしゃれなバーだったようだ。
一度だけ連れて行ってもらったことがあった。
バーはなかなか行くことがなかった。
兄は1人でもバーにいく事があったよう。私が連れて行ってもらったそこのバーで、
クリスマスのパーティー的なものがあって、どうやらドレスコードがあると。それはコスプレだという。
それを発案したのは兄ということをマスターから聞いた。
24日の様子をお店のInstagramで知った。
可愛い女子が3人でそれぞれコスプレをしている様子だった。
「言い出しっぺのあの人も何処かで見ててくれたかな?」と投稿してくださった。
顔出ししたかもしれないですね、と私がコメントをすると、
席を用意してくださったとのこと。なんとありがたい。「俺のことはいいんだよー」という兄の声が聞こえてきそうだとも。
続けて、
みんなで何かやりたい、という想いは大切に引き継いでいこうかなと思います。と記してくださった。
本当にありがたい。涙が溢れ出てしまった。
え、私来年コスプレ?するのか?
私は兄という存在を全ては知らないでいます。自分のことを自分で話さない兄だったから。
まだまだ色々な兄がいるはず。
兄を知る旅は、始まったばかり。
私は、この旅を思う存分楽しもうと思う。