幸せ、とは
生前母親はこんなことを言っていた。
「お父さんとは結婚したくなかった。」
精神病を抱えていた母、当初それを知らなかった父。
母の死後、私と一緒に住みたいと言い出す父。まぁそうなりますよね。実は兄が亡くなった時もそう言っていて。
父は家に残っている家財道具を一切そのままで私のところに行くという。
それはできないと私は丁寧に説明した。
さらに聞いてみると、母と結婚するとき、実家に家財道具などをほぼ全部置いてきてそのまま今の家にきたという。
そして今ある食器棚など家財道具は全部母が用意したと。そういえば私が幼い頃母が話してくれたことを思い出した。
母はまたこんなことをカミングアウトしてくれた。これは母が元気な時実家で聞いた。
「本当は好きな人がいた。バツイチで子供もいた。」という。
母が好きな人とは結婚できなかったかもしれない。(おそらく)父の猛烈アタックがあったおかげで母のお腹に兄を授かった。
そして私が産まれて兄妹二人育ててくれた。
母は私を産んでよかったと言ってくれた。その顔は穏やかで優しい笑顔だった。
母自身は幸せだったんだろうか?それはもう想像してみるしかできなくなってしまった。
父が思わずぽろっと呟いたことがある。
「女は図々しい。」
すかさず私は「お母さんはどうだったの?」
「図々しくはなかった。」
私が想像するに母は父を断ることができなかったのかもしれない。
だけどその気持ちを上回る父の母に対する想いがあったから四十数年の間別れることなく夫婦でいられたんだと思う。
父は一度婿養子として結婚していたことがあった。
でもうまくいかず別れて独り身だったことが母への気持ちにも拍車がかかったんじゃないかと思う。
私も父と同じバツイチとなってしまった。
実は、知り合いからこういう人がいるんだけど、と(私のことをいい子だからと)何度か紹介されたことがある。
一度会って、そこから発展しなかったこともある。
もしも紹介された人と繋がって、結婚することがあったらそれはまた違う人生になっていたのかもしれない。
「私の」幸せは誰が決めるのだろう?どうあると幸せなのだろう?